管理組合についての基礎知識
A1 管理組合は区分所有法に基づく団体で、区分所有者全員で構成され、共有財産である共用部分の維持管理を行います。
管理組合の役割は幅広く、建物や敷地、付属施設などを良好な状態に保ち、円滑な共同生活を維持するために必要なさまざまな事項が含まれています。
管理組合だけでこのような業務を行うことは、知識や技術も必要であり、現実的には難しいため、総会や理事会などで基本的な方針を審議・決定し、管理事務は管理会社に業務委託するケースが多いです。
■管理組合の仕事
・管理組合が管理する敷地および共用部分等の保安、保全、保守、清掃、消毒およびごみ処理
・組合管理部分の修繕
・長期修繕計画の作成または変更に関する業務および長期修繕計画書の管理
・建替え等に係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
・適正化法第103条第1項に定める、宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理
・修繕等の履歴情報の整理および管理等
・共用部分等に係る火災保険、地震保険その他の損害保険に関する業務
・区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認められる管理行為
・敷地および共用部分等の変更および運営
・修繕積立金の運用
・官公署、町内会等との渉外業務
・マンションおよび周辺の風紀、秩序および安全の維持、防災並びに居住環境の維持および向上に関する業務
・広報および連絡業務
・管理組合の消滅時における残余財産の清算
・その他建物並びにその敷地および附属施設の管理に関する業務
A2 区分所有者は全員組合員で、脱退することはできません。総会の決議に加わる権利とともに、管理規約などを守り管理費などを負担する義務があります。
マンションの所有者は全員が組合員です。購入や相続などで所有権を取得した時点で組合員となり、売却などで所有権を失えば、その時点で組合員としての資格も無くなります。マンションの所有者である限り、管理組合を脱退することは認められません。
組合員は、総会などに出席して意見を述べることや決議に加わる権利がある一方、マンションの敷地・建物・設備の維持、共同生活のルールを守るために、管理規約や使用細則、総会で決められた事項を守る義務があります。また、家族など同居する人や、賃借人などにも管理規約や使用細則などを守らせる義務があります。
また、管理費、修繕積立金や大規模修繕工事の実施にあたって、総会などで決めた負担金を納めることも組合員の大切な義務の一つです。
A3 毎年1回通常総会を定期的に開きます。この時期以外に審議したい事項がある場合は、臨時総会を招集します。総会開催日の少なくとも2週間前(管理規約に定める期間)までに組合員に通知する必要があります。
総会には通常総会と臨時総会があります。通常総会は毎年1回、会計年度終了後、管理規約に定められた期間内に理事長が招集します。通常総会では収支決算および事業報告、収支予算および事業計画を審議・決議したり、管理組合の役員を選任し、その他の管理組合の業務に関する重要な事項を審議・決議します。総会は必要に応じ、理事会の決議があれば招集することができます。
この他、組合員総数および議決権総数の5分の1以上の組合員が同意し、会議の目的を示して総会の招集を請求した場合にも、臨時総会を開催することができます。
また、監事は管理組合の業務の執行および財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができることになっています。
総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前までに会議の日時、場所、目的を示して組合員に通知しなければなりません。
A4 同居している配偶者であれば、委任を受けて出席することが可能です。
区分所有法では組合員の委任を受けて総会に出席し、議決権を行使する代理人について特に資格を定めていません。しかし、マンションは共同生活の場ですから、たとえ組合員の委任を受けた場合でも、マンションの事情を知らない人が総会に出席し議決権を行使することは望ましいことではありません。
このため、標準管理規約では代理人となる人の資格を、その組合員の配偶者または一親等の親族、その組合員の住戸に同居する親族、他の組合員に限定することとしています。
A5 4分の3以上の賛成が必要なものは、管理規約の制定、変更、廃止や敷地および共用部分の変更などです。
総会の決議には普通決議と特別決議があります。普通決議というのは、総会に出席した組合員(委任状を含む)の過半数の賛成で議決することです。大部分の事項は普通決議で決めることができます。
A6 理事会は管理組合運営に必要な方針を検討・策定し、総会の決議を具体化するために活動します。
理事会は管理組合の最高意思決定機関である総会の決定に基づいて、管理組合の基本的な運営方針などを検討し、総会に諮ります。日々の生活の中で発生するさまざまな問題を幅広く検討し、マナーやルールを周知徹底したり、組合員相互の意見を調整することも理事会の役割です。
理事会が開催された場合は議事録を作成し、決定事項を正確に記録しておくことが必要です。
A7 理事長は管理組合を代表し、総会で決められたことなどを実施します。対外的な契約の締結や交渉も理事長名で行います。
理事長は管理組合の代表者で、総会で選任された理事の中から選出されます。理事長は、区分所有法で定められた「管理者」として、対外的に管理組合を代表し、総会や理事会で決まったことを実施します。
たとえば、業務委託契約や請負契約などの締結、管理費滞納者への請求、ルール違反をした人に対する注意や訴訟の提起などは、管理規約や総会の決議に基づいて、管理組合名で代表者でもある理事長が行います。
総会も理事長が招集し、議長も、通常、理事長が務めます。総会の議事録は議長が作成します。また、管理規約や総会議事録は理事長が保管し、組合員から求められた場合には閲覧をさせなくてはなりません。理事会も理事長が招集し、総会で決められたことの具体化を検討します。
理事長の業務の範囲は理事会の承認を得て、他の理事に仕事の一部を委任することもできます。
副理事長は、理事長の職務を全般的に補佐する立場ですが、理事長が病気などで職務を行えないときは代理を務めることになります。また、理事長が転出するなどして組合員の資格や役員の地位を失った場合は、理事会が新しい理事長を選任するまでの間、理事長の職務を行います。
管理組合運営は区分所有法や管理規約がベースになりますから、日頃から目を通しておく必要があります。
A8 監事は理事会に出席し必要があると認めるときは意見を述べなければなりません。また、管理組合の業務の執行および財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければなりません。
監事も理事とともに総会で選任されますが、その仕事は管理組合の業務や財産状況を「監査」することです。このため監事は理事会に出席し必要があると認めるときは意見を述べなければなりません。ただし、理事ではありませんから、理事会の決議に加わることはできません。
監事は理事が総会の決議に基づいて仕事を行っているか、会計処理などが適正に行われているかなどを監査し、その結果を総会に報告しなければなりません。
また、監事が理事会運営に不正があると認めるときは臨時総会を招集することができます。
A9 役員はできるだけ居住している人を選任したいものですが、居住していない区分所有者に理事を引き受けてもらうことも可能です。
理事会は管理組合の日常業務を検討しますから、マンション内の実情に詳しい人が理事を務めるのが本来の姿です。理事は、できるだけマンションに居住している区分所有者を選任したいものです。管理規約に、役員は現に居住している組合員の中から選任するといった定めをしているマンションも少なくありません。
しかし、賃借人が多数を占めるようなマンションでは、役員を居住している区分所有者の中からだけで選出するのは、現実的ではありません。また、店舗所有の方で近隣に居住しているなど、マンション内の状態もよく把握しているというケースもあります。こうした場合には、実情に合わせて、居住していない区分所有者も含んだ全組合員の中から役員を選任することもあります。この場合、「・・・現に居住している組合員の中から・・・」と定めた管理規約を改正する必要があります。
A10 法令に違反しない内容であれば、管理規約を変更することは可能です。
マンションの管理と使用についての基本原則は、実情に合わせてマンションの管理規約で定めています。そして法令に違反しない内容であれば、マンションを管理する上で必要な事項を変更することも可能です。変更案は理事会が作成し、総会の前にその内容を組合員に知らせる必要があります。管理規約の変更には組合員総数および議決権総数の各4分の3以上の賛成が必要です。
管理規約を変更することで、一部の区分所有者の権利に特別な影響がある場合には、その区分所有者の承諾が必要です。また賃借人の利害に関係する場合には、賃借人は総会に出席して意見を述べることができます。 管理規約を変更した場合には、必ず記録を残し周知徹底する必要があります。共用部分の使用方法や禁止事項の詳細な内容は使用細則で定めるのが一般的です。
A11 通常総会で正式に決定します。
管理組合の予算案は、毎年の会計年度ごとに理事会で作成し通常総会で決定します。管理組合の通常総会は、会計年度終了後、管理規約に定められた期間内に開くことになっています。
決算案は会計年度終了後、通常総会までに理事会が作成し監事の会計監査を経て通常総会に提出します。
大京アステージでは管理委託契約に基づき、収支予算案および収支決算案の素案を作成いたします。
A12 理事長は、管理規約、総会の議事録、会計帳簿などを保管し、関係者から請求があった場合には閲覧させなければなりません。
管理規約、総会の議事録、会計帳簿などは、管理組合にとって重要な書類です。組合運営の経緯を示すものですから確実に保管し、役員の引継ぎの際には、これらの書類を渡すことが必要です。 また、組合員やマンションの購入予定者など利害関係がある人から、理由を付した書面で閲覧を求められたときは、正当な理由がある場合を除き、閲覧を拒むことはできません。
ルールとマナーの徹底
A1 賃借人が入居する際などに使用細則を渡し、これを守る義務があることを伝える必要があります。
使用細則はマンション生活の基本ルールを定めたものですから、賃借人も守る義務があります。賃借人が入居するときに使用細則を渡し、これを必ず守る義務があることを伝える必要があります。
マンションによっては専有部分を賃貸する場合に、区分所有者を通じて仲介業者が賃借人に使用細則の内容をあらかじめ説明するように依頼しているところもあります。また、区分所有者の義務として賃貸借契約を結ぶときに賃借人に使用細則などを守る誓約書の提出を、管理規約に定めているところもあります。
A2 管理規約や使用細則に基づき、管理組合として撤去を求める必要があります。
バルコニーは各住戸で専用使用していますが、この部分は共用部分です。従ってマンション全体の安全性や美観などを損なうような使い方をしないように、管理規約で定めています。日ごろの管理組合活動などを通じて、区分所有者や居住者全員に徹底することが大切です。特に、物置などが設置されていると、火災などが発生した場合に避難路を塞ぐことにもなり大変危険です。管理規約や使用細則に基づき、区分所有者や居住者に撤去を求める必要があります。
一つの住戸でも既成事実になってしまうと、他の住戸にも広がる可能性がありますから、発見した場合には迅速に対処することが大切です。口頭による注意や理事会名の文書により撤去を求める必要があります。
物置などでなくても、隣戸との隔て板や、避難ハッチの周辺に物を置くことは、万一の場合に危険です。
また、バルコニーにいろいろな物を置くと、集中豪雨などの際の排水をさまたげることになり、漏水事故などの原因にもなります。
A3 バルコニーに設置することは原則として禁止です。希望の多い場合には、管理組合で衛星放送用共視聴アンテナ(BSアンテナ・CSアンテナ)の設置を検討することも解決方法の一つです。
衛星放送が普及する前に建設されたマンションには、衛星放送の共同受信システムがありません。このため、衛星放送のアンテナをバルコニーに設置した住戸を見かけますが、決して望ましいことではありません。マンションの外見を損なうだけでなく、万一落下して通行人などに当たった場合には管理組合が責任を問われる可能性もあります。多くの住戸が各戸ごとにアンテナを設置してからでは、共同受信システム導入の合意が得にくくなります。理事会などが積極的にイニシアチブを発揮し、共同受信システムの導入を進めることがよいでしょう。技術の進歩やライフスタイルの変化にともない、建設当時はなかった設備などを設置することは、マンション生活の向上とグレードアップをはかる上で、管理組合の大切な役割といえるでしょう。
A4 漏水事故の主な原因には、各居住者の不注意によるものと、給排水設備などの経年劣化によるものとがあります。
漏水はマンション生活の中で比較的発生しやすい事故です。物的な損害を保険などでカバーした場合でも、居住者間に心理的なしこりが残ることもありますので、事故発生を防止する努力が欠かせません。
主な発生場所や原因としては次のようなものがあります。
1.専有部分などの使用上の不注意によるもの
(1) 洗濯機の給水・排水ホースの外れ(特に全自動式)
(2) トイレに異物を流したことによる詰まり
(3) バルコニーの排水口の詰まり
(4) 断水時の蛇口の閉め忘れ
(5) 電気温水器の排水口の詰まり
(6) 浴槽の残り湯利用時のポンプのホース外れ
2.共用部分の設備の経年劣化によるもの
(1) 給排水管の接続部分の緩みとパッキンの老朽化
(2) 屋上防水の劣化による雨漏り
(3) 給排水管の劣化などによる穴
給排水管等は配管されている場所により共用・専有の責任が区分されています。
専有部分などについては、管理組合が直接タッチすることができないので、所有者および居住者に注意を促すことが必要です。
また共用部分については、管理組合として定期点検や計画修繕を適切に行うことが必要でしょう。
A5 リフォーム工事が適切に行われるようにするため、リフォーム工事をしようとする人は事前に理事長に届け出をし、管理組合として承認することを使用細則で定めます。
リフォーム工事は、廊下やエレベーターなどの共用部分を頻繁に使用したり、工事中の騒音など、他の居住者にも大きな影響を与えることがあります。専有部分内の問題ですが、管理組合と無関係とは言いきれません。
事前にリフォーム工事を届け出、その際には設計図や仕様書、工程表などを添付するように求めるなど、管理組合でルールを作ることが、トラブルの防止に役立ちます。
工事のときには、使用する共用部分に必ず養生をすることや、工事のできない曜日や開始時間と終了時間も決めておいたほうがよいでしょう。
A6 引越し作業で共用廊下や玄関、エレベーターなどが傷つかないように注意することや、居住者に使用細則などを徹底することが必要です。
マンションサポーター(管理員)退居届を受理し管理事務室に保管したり、エレベーターの使用などの必要な注意をします。管理組合が居住者に対して使用細則を周知することなどは、印象も強くなり、マナーの徹底もはかりやすくなります。マンションに新しい仲間が加わったという視点で、あくまでも温かく、伝えるべきことは伝えるというようにしたいものです。
A7 実際には使われていない自転車があるかもしれません。使用状況を調べたり、世帯当たりの台数を決めるなどの対策が考えられます。
築年数が経過するにつれて自転車の数が増えるのが、一般的な傾向です。しかし、よく調べてみると実際には使用されていない自転車が自転車置場を占領していることもあるはずです。
対策として、自転車を登録制にしてシールを貼るなどの方法で、管理しているマンションもあります。また、居住者に対するアンケートを実施したり、所有者を確認するなどの手続きを取ってから、自転車の数が増えないように理事会や総会で決めた管理組合もあります。
なお、自転車の処分にあたっては、警察への防犯登録に関する確認などが必要な場合もあるのでご注意ください。
A8 口頭や文書による注意などをしても改まらない時は、理事長が勧告や指示をします。それでも効果がない場合、総会の議決により裁判所に訴えを起こすこともできます。
マンションに住む人たちが、お互いに気持ち良く暮らすために、共同生活の秩序を維持することは管理組合の基本的な役割です。
管理規約やルールを守らない居住者を、義務違反者と言います。義務違反者に対し、理事長は理事会の決議に基づいて勧告や指示をすることができます。ルール違反が発生したときには放置せずに、理事会で検討して速やかに注意することが必要です。
それでも問題が解決しない場合には、総会の決議により違反行為者以外の区分所有者は、理事長を原告として裁判所に訴えを起こすことができます。総会でこうした決議をする場合には、あらかじめ義務違反者に弁明の機会を与えなければなりません。
■訴訟の場合の請求事項
(1)その行為を止めさせたり、違反する物を撤去させることなど(差止請求)
(2)義務違反者が一定期間専有部分と共用部分を使用することを禁止すること(使用禁止請求)
(3)義務違反者の区分所有権などを競売する(競売請求)
(4)賃借人等に対し賃貸借契約書を解除し専有部分の引渡しを命ずること(引渡請求)
※ こうした決議は、(1)は普通議決でできますが、(2)(3)(4)は総会の特別議決が必要です。
管理費と修繕積立金
A1 区分所有者は住戸の使用状況などに関りなく管理費・修繕積立金等を納める義務があります。長期間滞納されると組合運営に影響を及ぼすので、根気よく督促する必要があります。
管理費・修繕積立金等はマンションの共用部分や共用施設を維持するためのものですから、管理規約に特別定めがない限り各区分所有者の専有床面積の割合に応じて負担することが区分所有法で定められています。住戸の使用状況などにかかわりなく、区分所有者である限り管理組合が定めた管理費・修繕積立金等を必ず納めなければなりません。
もしも、住戸の使用状況などを考慮して管理費の負担割合を変えると、たとえば1階の所有者はエレベーターを使わないから管理費が他の組合員より安くてもよいといった意見も成り立つことになり、組合運営に大きな混乱が起きることになります。
管理費の滞納対策としては、6ヵ月で内容証明での督促状を出し、1年を目安として法的措置を取るなど、理事会での運用基準をもうけておくと処理もスムーズです。
A2 修繕積立金は修繕工事に備えるためのものです。一般会計の赤字を補うことは望ましくありません。
管理組合の会計は、日常の維持管理のための一般会計、何年かに一度必要になる修繕のための特別修繕会計とに分けておく必要があります。
修繕積立金はあくまでも計画的な修繕工事などに備えるためのものですから、日常の管理費とは区分して会計処理をしなければなりません。したがって、一般会計が赤字になる場合には、修繕積立金を取り崩すのではなく、管理費の設定を見直す必要があります。
一般会計は、マンションを維持管理するために使う消費会計です。決算が予算どおりに執行されていることが理想です。
A3 管理会社が電話や文書による通常の督促を行った後も納入されない場合は、別途法的な措置も含めた対応が必要です。
管理費・修繕積立金等が滞納されると組合運営に重大な支障が生じますから、未納が発生した場合には速やかに行動することが大切です。
大京アステージでは毎月の管理費・修繕積立金等の収納状況を把握し、未収納金がある場合には理事長に速やかに報告しています。未納の管理費・修繕積立金等の督促は法律上は理事長が行うことになっていますが、区分所有者相互の間で督促をすることは簡単にできることではありません。
このため大京アステージでは管理委託契約に基づき、未納の組合員に対して支払い期限後の一定期間、電話や文書の送付などにより請求と督促を行います。
A4 未納分の管理費を競売の配当で受けることはなかなか難しく、住戸を所有することになる競落人に請求することになります。
法律上は滞納された管理費・修繕積立金等について、管理組合は先取特権が認められていますが、実際には抵当権を設定している金融機関などが優先的に配当を受けることになります。この段階で管理組合が未納分の管理費・修繕積立金等を回収することは困難な場合が多くなってしまいますが、配当要求の手続きは取っておいたほうがよいでしょう。
競売されたマンションを競落した人は当然組合員になり、特定承継人として前区分所有者が滞納していた管理費・修繕積立金等を管理組合に納める義務を負うことになります。
大京アステージでは競売時に配当を請求することや、競落人に前所有者が滞納していた管理費・修繕積立金等を請求するための業務を、別途協議により代行します。
A5 長期修繕計画と修繕積立金の収支予測を定期的に見直し、毎月の積立金額が妥当かどうか、データをもとに検討することが大切です。
マンションの資産価値を守ることを考えると、修繕積立金は多いことにこしたことはありません。積立金が十分にあれば大規模修繕工事を実施する場合の合意も得やすくなります。このため、長期修繕計画と修繕積立金の収支予測を定期的に見直し、毎月の積立金額が妥当かどうかを組合員に知らせ、データをもとに検討する習慣をつけることが望ましいです。
修繕積立金の値上げが必要な場合には、根拠を明らかにするとともに、改定の幅や時期、場合によっては段階的な引き上げ方法を検討するなど、組合員の納得を得やすくしたり、負担感を減らす工夫も必要です。
安全対策
A1 消防法により居住者が50人以上のマンション(複合用途型マンションの場合は30人以上)では、防火管理者を選び、消防計画を作成したり、防火活動を行うことが義務づけられています。
A2 火災報知器、消火のための消火器や消火栓、避難器具、誘導灯などがあります。それぞれが設置されている位置や使用方法などを、居住者は理解しておくことが必要です。
マンションはホテルなどと同様に建築基準法で特殊建築物に指定され、消防設備の設置基準が厳格に定められています。
地域やマンションにより多少異なりますが、共用部分には火災報知器、消火栓、消火器などが設置されています。また、各住戸内からの避難のためにバルコニーには避難ハッチ、室内には熱感知器なども設置されています。これらの消防設備は6カ月ごとに機器点検、1年ごとに総合点検を有資格者により実施します。また、点検結果を1年に1回、もしくは3年に1回、消防署長に報告しなければなりません。
なお、各住戸の熱感知器や非常警報の仕組みはマンションによって異なりますから、警報の鳴る場所、通報される先などを普段から確認しておくことが必要です。
大京アステージでは、管理委託契約に基づき消防設備の法定点検を実施し、報告書を管理組合に提出するとともに管理組合に代わって消防署に提出しています。
また、避難ハッチの改修や、熱感知器などの交換や修理が必要だと判断される場合には、その旨を理事会に報告します。
A3 バルコニーからの漏水、高層階から落下物などの危険がありますので、管理組合として居住者に注意を促す必要があります。
マンションの風水害対策として最も重要なのは、バルコニー内の整理です。置いてある物が風で飛んだり、倒れたりすると大変危険です。特に、高層階では風影響が大きくなるため、洗濯物のかかった物干し竿なども強風にあおられて飛ぶ可能性があります。事前にバルコニーに置いてあるものを室内に入れるなどの対応が必要です。
バルコニーの排水口がゴミなどで詰まっていると、雨水があふれ室内に浸水したり、階下への漏水につながります。落葉やゴミなどが排水口を塞がないように、居住者に注意を促すことも大切です。
また、浸水のおそれがある機械式駐車場のピットや地下駐車場があるマンションでは、車を早めに安全な場所に移動するように、日頃から利用者に注意を促す必要があります。
なお、氾濫しやすい河川が近くにあるようなマンションでは、管理組合として土嚢や水嚢を用意するなどの対策も立てておきましょう。
A4 管理組合として非常用の備品を準備しておく必要があります。
管理組合として備えておいたほうが良い備品類や工具も準備しておく必要があります。拡声器やスコップ・バールなどは、いざというときに役に立ちます。
所有者・居住者名簿と非常の場合の連絡先を把握しておくことも重要です。
過去の地震では、住戸内での家具の転倒などによる被害が多く発生しています。室内の事故を防止するために家具の転倒防止やガラスの飛散防止などについて居住者に注意を促したり、また避難の方法や場所、注意事項を徹底することも大切です。
大京アステージでは防災用品の一括購入などのサポートもいたしますので、詳細はマンション担当者へお尋ねください。
A5 建物の共用部分にかける火災保険や、第三者に損害を与えたときに補償する、賠償責任保険があります。
建物の共用部分に損害を受けた場合や、共用部分の施設が原因で第三者に損害を与えた場合、その修繕費用・損害賠償額は各区分所有者の責任で共同負担することになります。修繕費用・損害賠償額の各区分所有者の支払いトラブルを避けるためにも、共用部分に火災保険・施設賠償責任保険を管理組合で一括して加入することが可能です。
また、居住者の日常生活上の行為が原因で第三者に損害を与えた場合、その損害賠償額は各居住者が個別に損害保険に加入しておくなどの備えが必要ですが、1つの建物で共同生活をするうえでは、居住者間のトラブルを未然に防ぐため、個人賠償責任保険にも管理組合で一括して加入することが可能です。
大規模修繕工事
A1 建物を長期にわたって良好に維持管理していくため、計画期間が30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とすることが望ましいです。
長期修繕計画はまず築30年までの計画を作成するのが最近の傾向です。エレベーターや給水管の交換など、多額の費用を要する工事が、築25年頃から発生するため、こうした工事に備えるためには、築30年程度までの長期修繕計画を作成しておくことが必要と考えられています。
しかし、技術革新や、社会・経済情報の変動があることを考慮すると、計画期間が長ければよいというものでもありません。修繕工事の実施状況なども反映して、キメ細かく計画を見直すことで、実情に合った計画にすることが大切です。
大京アステージでは30年の計画を作成した後も、定期的に計画の見直し案の提示や建物診断の提案、適正な資金確保、工事の実施をサポートいたします。
A2 見直しは、長期修繕計画を作成してからおおむね5年毎に行うことが合理的です。
長期修繕計画に基づく資金計画は、あくまでも計画を作成した時点での工事単価をもとに作成し、積立金の金利などは考慮していません。
したがって、物価の上昇や技術向上による工事費用の上昇などで、実際に工事を行う時期には資金不足になる可能性もありますから、資金計画の見直しを行う必要があります。長期修繕計画の見直しに合わせて改定することが合理的です。
また、新築当時の状態に近づけることを目的とする工事だけでなく、新しい設備の導入や仕様のグレードアップなどを予定する場合には、その費用も資金計画に組み込むことが必要です。
大規模修繕工事を検討する際には、将来計画を見据えて工事計画を最適化させることが重要ですから、工事検討中も資金計画を見直すタイミングとなります。
■新しい設備導入やグレードアップ工事の例
・バリアフリー化(スロープ設置、手摺設置)
・防犯システム化(オートロック設置、セキュリティシステム)
・エントランス廻り美観向上
・LED照明器具への更新
・複層ガラスへの交換
A3 ひとつの目安として、国土交通省が示しているガイドラインでは、12年程度ごとに行うこととされています。ただし、立地条件などにより適切な時期は異なります。
外壁のタイルや塗装の補修工事については、一般的には足場をかけなければできません。このような工事を修繕工事の中でも区別して大規模修繕工事と言います。必要時期はだいたい築10年を過ぎた頃になります。
大規模修繕工事が必要になる時期も実際には、建築された時期やその立地条件により異なります。大規模修繕工事を実施する前に、建物診断を行うことによって、建物の劣化状態を把握し、修繕の必要箇所および時期について、判断する必要があります。
A4 建物診断を行い、建物の劣化状態を詳細に把握することで、工事の実施時期や適切な工法を判断することができます。
長期修繕計画表の工事の実施時期は、新築当時に設定したものです。したがって実際の工事の実施時期は、計画表に示す修繕周期に合致しないこともあります。また計画した修繕周期が到来しても、直ちに工事をする必要がないこともあります。
建物診断は建物の健康診断と同じで、建物の劣化状態を技術者による目視、打診の他、機械などを使って具体的に把握するものです。タイルや塗装に浮いている部分はないか、ひび割れはないかなどをしっかりチェックします。
診断結果により修繕が必要な箇所と時期を特定し、合理的な工事を行うことができます。
また、一口に修繕と言ってもさまざまな工法が考えられます。建物診断を行うことにより、劣化部分の適切な修繕方法を選ぶことができます。
A5 区分所有者の合意を得るため、建物診断から始め、一歩一歩着実に手順を踏むことが大切です。
一番大切なことは組合員および居住者の理解を得ながら進めることですから、準備段階から一歩一歩着実に手順を踏んで進めることが大切です。
特に、次の3つのポイントを押さえる必要があります。
(1)どこをどんなふうに修繕するかを判断し、修繕工事の方針を決めます。
そのために建物診断を行い、修繕の判断材料とします。
(2)費用がおおよそどの位かかるかを調べ、資金の準備をします。
修繕積立額が予定する工事金額に満たない場合には、修繕工事の実施までに少しでも積立金を増やすようにしたり、借入金や一時金徴収などの方法を検討することになります。
(3)総会などで審議する前に、アンケートを実施するなど、事前に組合員の十分な理解を得るようにする必要があります。
こうした手順を踏んで、修繕工事を実施することを総会で審議・決定します。
スムーズに検討をすすめるためにそれぞれの管理組合の特性にあった検討体制を構築することが大切です。
理事会の専門部会として「修繕委員会」を設け、設計や施工に知識のある組合員の参加を求めて理事会を補佐する方法も行われています。
A6 組合員から一時金を徴収するか、管理組合でローンの借入れをすることになります。
一時金の徴収が高額になると、修繕工事実施の合意がしづらくなります。ローンと併用する管理組合もあります。大規模修繕工事についてのローンは住宅金融支援機構や銀行、信託銀行、信販会社などでも取り扱っています。
ローンの返済期間は最長10年程度ですから、毎月の返済額が比較的多くなります。次の修繕工事も考慮に入れて、ローンの額や返済期間を決めることが望ましいでしょう。
A7 施工業者により工事の進歩状況を居住者にこまめに知らせるようにし、工事中の安全対策を第一にしなければなりません。
大規模修繕工事は居住者が日常生活を送る中で実施する工事です。洗濯物が干せない、窓が開けられないといった、生活に影響することも多々あります。思わぬ事故やトラブルが起きないように、工事の進歩状況や予定を詳しく知らせ、居住者の理解・協力を得られるようにするなど、大規模修繕特有の配慮が求められます。
資材の搬入や保管の時にも安全対策が大切です。工事中に事故が発生すると、施工業者は当然のこと、管理組合も責任を問われることがあったり、工事を中断せざるを得ないような事態になることもあります。
また管理組合の資産維持とグレード向上のための工事なので、居住者に工事の協力を要請することも大切なことです。
マンションの大規模修繕工事を数多く手がけている施工業者であれば、日常生活に関連した注意事項についてもよく把握しているはずです。これは、業者選定の判断材料の一つになります。
大京アステージは、多数のマンションの修繕工事の施工・監理などを経験しています。こうした実績をもとに、居住者の方々の日常生活への影響をできるだけ減らすために、理事会と密接に連絡を取り、工事を進める提案を行っています。